片町がアートと出会う。

石田漆器店×佐直麻里子

漆の木は、日本では生い茂る草木を分け入った先のごく限られた生育条件下のみで育てられています。石田漆器店の店主が、数ある作家情報の中から緑豊かなモチーフを多く用いる佐直さんの作品に惹かれたのも、どこかでそんな漆のルーツを示したかったからかもしれません。その幹から掻き出される漆液のほとんどは、研鑽を積んだたくさんの職人の手を経て漆器として完成し、私たちの目の前に並びます。一見して計算され尽くした美しさ・完成度を持つ漆器たちですが、大元は山間の原初的な、自然に溢れた環境が必要なのです。この作品は、和紙の裏側に茂みを書き込んでおり、人工物で溢れるまちの中で奥床しく叢茂の存在を意識させます。その表現は漆器に原初の呼吸を取り戻し、屋内を思わせる直線・矩形による視覚的効果の先に、漆器が辿ってきた時間の奥行きを思い起こさせるものです。店主の見通しの通り、緑は店の漆器に潤いを与え、ショーウィンドウは新鮮な空気の漂う場所に生まれ変わりました。
(設置日:2022年3月20日)

タイトル:新しい窓
ドローイング作品
素材:和紙、水彩絵具、岩絵具
額装:SKLo

●石田漆器店
創業は、1869年(明治二年)。片町の犀川大橋すぐそばで営業しております。輪島塗、山中塗のお箸、お椀を中心に、各種塗り物を揃えております。
金沢にお越しの際は、ぜひお立ち寄り下さい。
http://ishidasikkiten.com

●佐直麻里子(Sajiki Mariko)
北海道生まれ、金沢美術工芸大学美術工芸学部日本画専攻卒業、同大学大学院修士課程絵画専攻日本画コース修了。
https://www.sajiki-mariko.com/

 

石川県金沢市片町1-7-21